蒼海領〜闇の記述(第58話)
トクネードの所属基地であり、旅立ちの地でもある新川上駐屯地。
そこにはすでに人の気配はなく、すでに閉鎖された遊園地の空気を醸し出していた。
そして、錆びついた歴史が少しづつ動き始めていた…
そこにはすでに人の気配はなく、すでに閉鎖された遊園地の空気を醸し出していた。
そして、錆びついた歴史が少しづつ動き始めていた…
〜第五十八話〜いにしえっぽい駐屯地
「…僕たちの居住区は無事だけど、他は結構片づいてるね。」
「ああ、なんか不良に呼びだされた子供みたいな役回りみたいだな。」
代算が言葉を放ち、それを名無野が受けとめる。光差す地下空間を哀愁の空気が流れてゆく。
「作業中ー!作業中ー!」「名無野君!現実をちゃんと見据えてよ!」
((…でも、平和っていいよな。こんなにまったりしたのは久しぶりだよ。))
ただし、臨日と嵐割も一緒なので憂鬱になることはない。まったりとした平和な昼下がり。
現在、代算、臨日、嵐割、名無野は居住区の引っ越し作業を行っていました。
―――――――――――――――――――――――――――――――
嫌な予感がするshがyhしい!!!
くそまったりってへんなkjhsgxさい棒を入れたり出したりaydg
―――――――――――――――――――――――――――――――
ときおり聞こえてくるのは、通信回線が運ぶ毒男の声。気にしない気にしない。
広大な原生林の地下に造成した、陸上自衛隊新川上駐屯地(超特)。
近くに居住地を持つ雷仁族の協力の下、トクネードなどの特殊部隊や研究のために造られた。
地上の原生林は国立公園であるため開発が許されず、なんと駐屯地自体が地下に潜っている。
数ある駐屯地のなかでもトップクラスの隠蔽率を誇るが、維持費が高額なのが弱点だ。
今回の駐屯地解散の原因もそれで、なんとトクネードが任務で外出した隙に決定されてしまった。
国家予算の配分が間違っていると言えばそこまでだが、人民公国はスパイや国賊が大手を振って闊歩している国なので仕方がない。
「まぁ、僕たちトクネードは大規模組織じゃないから部隊編成に苦労はしないけど。」
トクネードは国家と民間の双方で活用できる特殊部隊である。が、実際には大きな組織に寄生しているだけである。
また、変わり種メンバーの寄せ集めである関係で敵も多いが、味方につけると利用価値が高いという不可解な部隊でもある。
人員数が少ないため部隊の分割は得策ではなく、中には同時行動を要求するものもいるため扱いは難しいそうだ。
そうこうしているうちに、自分たちの居住区を片づけた代算達一行。
このままとんぼ帰りするのもつまらないので、既に廃墟と化した新川上駐屯地を探検することにした。
ここはトクネードの所属基地。そのメンバーである代算達一行にとっては集合住宅の庭のようなものである。遭難の心配はない。
廃墟探索における一番の問題は施設関係者の巡回だが、そもそも代算達一行は施設関係者であるのでこっちも心配なし。
「じゃ、代算が明るいほうね。私は名無野君と暗いほうに行くからよろしく。」
「OK。三千世界の毒男を殺す嵐のような展開を待ってるよ。」
「抗議!抗議!抗議!」ξ////)ξ(^ω^ )「よろしい。ならば探検だお。」
代算のひとことで暴走しかけた嵐割の手を引き、名無野は地底遺跡へと消えていった。
代算はその様子を見て毒づこうかと思ったが、頭が熱くなってきたので止めた。
別に熱が出たわけではない。臨日が嫉妬して熱を発しているだけだ。
「むー…」「臨日、行こうか。負けてられないよ!」「!…〜♪」
臨日は機嫌を直してくれた。でも意図するところはおそらく違う。別に良いけど。
こういう時は一回外へ出るに限る。代算は最寄りの出口から出て、別の入口を探し始めた。
「お、トクネードの衆も来てたのか。帰ってきた瞬間にこのあり様ってのは正直きついと思うが、どうよ?」
「あ、基地指令!お仕事御苦労様です。メンバー自体は解散したので影響は少ないかと。」
「…ちょっと待て。それは真面目にやばいだろ。常識的に考えて…」
新川上駐屯地の指令官が、基地の最期を見守るべく見回りをしていた。
彼は雷仁族でかなりの年長者。この駐屯地(=彼の家)の実質的な管理人であり、一時期は引退の噂もささやかれていた。
しかし、実際はこの通り、彼の引退と共に駐屯地まで廃止されることになった。
「メンバーが無事で、需要があればトクネードはまた甦りますよ。」
「おじちゃんたち3部族の意志があればなんとかなるー!」
代算の返答に、臨日の援護射撃。戦闘さながらの連携だ。
しかし、そこは地元民である基地指令。すべてを知り尽くしたホームグラウンドで負けるわけにはいかない。
「そうか…あれ?もう一組いたカップルはどこへいったんだ?」
「嵐割たちなら基地の深淵へ向いましたよ。それがどうかしましたか?」
「あ、これから撤去する予定の機械がまだ残ってた。けど、あの二人なら通信が通じるはず。」
「嵐割と名無野なら大丈夫でしょう。どこでも使える自走式通信機みたいな連中ですから。」
代算の顔に心配の色はなかった。嵐割と名無野は如何なる環境でも大容量インターネット接続が可能であるからだ。
これを使ってWi-Fiやバーチャルコンソールを起動させたり、あらゆる無線を傍受することが出来る。
ただし、この能力はどっちかが欠けると弱体化する。
「こちら基地指令。そちらに懐かしの遺物がある。ちょっと確認してみてくれ。」
「わかりました。探索を続行します。」
その解答はすぐに返ってきた。
「HVC-012『ファミコンロボット』ですね。ただ基盤などが完全に痛んでますね…」
ファミコン時代の周辺機器とあって、かなりの骨董品である。とはいえ金属部分の酸化による劣化が進んでおり、もはや使い物にならない。頑丈さが売りの任天堂製品とはいえ、定期的な使用とメンテナンスを受けてない製品はただの有害な置物だ。
また、スーパースコープ、バーチャルボーイ、スーパーゲームボーイなどの周辺機器、さらにはゲームハード本体や各種ソフト、電源供給やデータ送信に用いる各種コード類までもが存在していた。
そこは一種の資材置き場。昔、この基地で電子技術の発展のためにゲーム機を研究しつくした部屋の跡だ。
「これ、いったいどうするんですか?環境に負荷をかける遺産ばっかりですよ?」
電子機器にはあらゆる金属と化合物が駆使される。それらは薬のように働き、捨てられると大地を蝕む。
「問題はそれだけじゃない。誰もいないはずのその部屋に、なぜか生命反応があるんだ。ここんとこ開けてなかったし、食料も存在しない部屋だから生存できる訳はないはずだ。」
嵐割と名無野に戦慄が走った。誰もいないはずの部屋にある生命反応。これを矛盾と言わずしてなんとする。しかもこの部屋は高分子化合物や重金属が大量に存在し、普通の生物は生存できない。
かくして、その部屋に存在した命の灯とは…
「zzz…すぅ…zzz…」
生気を失ったかのような青白い肌をした幼女が、微かな寝息を立てて安らかに眠っていた。
瞳はあらゆる色に変わり、薄く滑らかな七対の翼は虹色の各色に対応。頭部には虹色の各色に彩られた水晶を率いている輪が浮かんでいる。
生命無き空間に存在した謎の生命は、イレギュラーな存在とは何たるかを伝えていた。
「…すまん。俺は機械類の整理に移るから、嵐割はあの子をなんとかして欲しい。」
「仕方ないなー。でも名無野君ならそう言うと思った。」
名無野にとって、幼女はある種のトラウマだった。幼少のころから女性陣に暴力を受けて育った身である。中でも妹の夜謝節による暴力は人智を遥かに超える強烈なものであったという。故に今でも油断を欠かすことはない。
故に嵐割の出番である。彼女は眠れる幼女を起こそうと手法を凝らしたが、逆にそれが仇となって…
「ん〜…むにゃ!」む、うがっ、離れろっ!」
起こした幼女が作業中の名無野に絡んだ。名無野は衝動的に回避を試みるが、あたりの機械類が巻き込まれてうまくいかない。
「ねー、おにーちゃん遊んでよー」だが断るっ!」
あたりの機械類で名無野を捕まえようとする幼女を前に、嵐割は全身の筋肉を震わせた。
―――女の嫉妬、それは男を一方的に封殺する魔性の力―――
名無野が幼女を引き離し嵐割に向け移動したと同時に、嵐割は暗黒の意思を身にまとい瞬時に名無野を包み込む。
「ごめん、なんとか大丈夫。」「ふふふ…幼女だからって容赦はしないわよ…私の男に手を出した罪の代償は軽くないんだから…」
闘志を剥き出しにした嵐割はすでに原形を留めておらず、安堵の息を漏らした名無野にまとわりつくことで己の存在を維持している。
「むー、おねーちゃんだけずるいー!いじわるー!!」
幼女は頬を膨らませると、己の羽を輝かせそこらじゅうにある雑多なゲーム用物品を集めていった。回収された物品は次々と形を変え、一つの大きな機械へと変化を遂げる。
「廃韓の能力に似てるな。嵐割。これからリミッターを解除するから、あの魔女にお灸を据えてやってくれ。」
名無野は嵐割の暗黒に己の身を預けた。即座に嵐割が登場し、名無野はWiiと強化部品を残し嵐割に吸収された。
「もちろん。名無野君は誰にも渡すわけないんだから…」
魔女の造る機械が巨大化し、部屋の構造を破壊していく。ただここはすでに役割を終えた施設であり、一つの機械として吸収されるだけなら環境面に支障はない。どうせなら基地全体を吸収してもらおう。そう考えた嵐割は周囲に電波を飛ばした。
「基地を解体します!全員退避してください!!」
と同時に異次元空間への扉を開いた。と言っても次元の解れを引き裂いただけの簡素な物。そこに魔女と基地を引きずりこみ、環境に与える影響を最小限にする。
魔女は基地の基礎までをも吸収し、巨大な…ファミコンロボットを作り出していた。強度は上がっているがデザイン性がちと足りない。でも強さは未知数である。いわゆるガクエンガーの類である。瞳は赤く輝いていた。
嵐割は名無野のWiiに乗り、幼き魔女に猛烈な吹雪をお見舞いした。これで小手調べというんだから恐れ入る。でも…
「…効かないわね。恐らく戦うのも無茶な相手よ。何やっても八百長にしかならないわ。」
現在の嵐割は名無野を取り込んでいるため思考が2人分、演算能力に至っては3人分もある。融合時に理性が剥がれるとはいっても、ただ本能のみで動き続けるわけではなく、きちんと理性は再生される。
「ただ、打開する方法が見当たらないってことしかわからないけど。」
それでも、相手は強すぎるのだ。いや、理不尽すぎるというべきか。
「あたし、ノアメルト・ロスティア・エルカンシエルっていうの。よろしくね!」
自己紹介しながらブロックやジャイロを飛ばして来る様はまさに傍若無人。しかも付加されている属性の種類が半端ない。というのもあらゆる世界の属性をことごとく駆使しているからである。もちろん、それによる世界観のずれなどは全く問題にならない。ファミコンロボットはと言えば、ブロックやジャイロをノアメルトに奪われ、代わりにスーパースコープを左肩に搭載している。恐らく数秒後には強烈な一撃が発射されるはずだ。
嵐割はすかさず高速移動。ブロックを掴んで投げつけ、砲身を微妙にずらすことで砲撃を回避する。弾幕は投げたりかわしたりの力技回避。
決め手を欠くがしょうがない。なにしろ何を放っても全く効かないのだから。格闘攻撃で削るしかないが、接近するのも大変である。
「(それなら…簒奪だ!準備はいい?)」
足もとのWiiからエネルギー弾が射出され、ロボットの胸部に命中。なんとその部分が開いて間隙が形成された。
「(流石は名無野君、凄まじいことを考えるわね。OK、やってみる。)」
ノアメルトの弾幕もなんのその、嵐割はロボ胸部にできた空間に侵入した。Wiiが隙間を塞ぎ、ロボットの胸部が元通りに閉じられる。ロボットの眼が赤から緑に変わり、乗っ取りは正常に完了した。
これでブロックやジャイロはこっちのものだ。もちろん、効くわけではないのだが。時間稼ぎ程度にはなるだろう。とりあえず撃ちまくってみる。
「むだむだむだむだー!」
なるほど、確かに効いていない。むしろ違う形態をとって跳ね返されている。しかし、真の狙いは弾幕戦なのではない。巨体を生かした格闘攻撃。だが、
「返してよー!!」
ノアメルトの叫びと共に、ロボットの形態が崩れた。嵐割はすぐさま体勢を立て直し、男にも勝る強烈な拳を魔女の脳天にお見舞いした。
ガッ!! 「うえーん!い゙たい゙よぅー!!」
哀れ、ノアメルトは一撃で吹き飛ばされてしまった。轟音のような泣き声があたりに響く。それは巨大ロボ再構築の呼び声。と同時に、虹色の光が柱となって降り注ぐ。
『泣く子と地頭には勝てぬ』とはまさにこのことを言うのだろう。
まさに絶体絶命かに見えたその時、嵐割はこの状況を打開する一つの方法を見出した。
相手は理不尽を体現した存在。すなわち理不尽の原動力であり、理不尽な状態を維持して戦っている。
ならば、取るべき手段は意外と難しくない。少々マナーが悪い行動だが、理不尽な相手にはこれくらいがふさわしい。
** 嵐割(+名無野)さんがログアウトしました **
戦闘中に通信対戦をあきらめ、形式的敗北を喫して元の世界へ戻った。ノアメルトだけを置き去りにして。
本来ならばここで試合が終了するはずなのだが、なぜか終了しない。もっと遊びたいけど、遊べない。まるでカセットを半挿ししたり、ディスクを途中で抜いたりしたかのように場は固まる。
動けるのは『不揃の魔女』ノアメルトだけ。しかし何もできない。終わったら脱出できるはずの空間から、脱出できない。
「…ふぇっ、誰もいないよぉ〜〜〜〜」
嵐割は何を狙ったのか。相手が持つ『矛盾』の力を用い、矛盾だらけの亜空間を作り出すことだ。それは秩序を持つ嵐割(+名無野)が抜けることで完成される。矛盾とは本来不安定なものなのだが、ノアメルトは理不尽極まりない能力をもって矛盾を容認する。それが逆に枷となってしまったのだ。
「うぇえぇっぇぇっぇえぇxっぇぇぇーーーーーーーーーーん!!」
ノアメルトはただ一人泣き続ける。皮肉にも、自ら作りだした矛盾という名の理不尽な箱庭の中で。
「…僕たちの居住区は無事だけど、他は結構片づいてるね。」
「ああ、なんか不良に呼びだされた子供みたいな役回りみたいだな。」
代算が言葉を放ち、それを名無野が受けとめる。光差す地下空間を哀愁の空気が流れてゆく。
「作業中ー!作業中ー!」「名無野君!現実をちゃんと見据えてよ!」
((…でも、平和っていいよな。こんなにまったりしたのは久しぶりだよ。))
ただし、臨日と嵐割も一緒なので憂鬱になることはない。まったりとした平和な昼下がり。
現在、代算、臨日、嵐割、名無野は居住区の引っ越し作業を行っていました。
―――――――――――――――――――――――――――――――
嫌な予感がするshがyhしい!!!
くそまったりってへんなkjhsgxさい棒を入れたり出したりaydg
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ときおり聞こえてくるのは、通信回線が運ぶ毒男の声。気にしない気にしない。
広大な原生林の地下に造成した、陸上自衛隊新川上駐屯地(超特)。
近くに居住地を持つ雷仁族の協力の下、トクネードなどの特殊部隊や研究のために造られた。
地上の原生林は国立公園であるため開発が許されず、なんと駐屯地自体が地下に潜っている。
数ある駐屯地のなかでもトップクラスの隠蔽率を誇るが、維持費が高額なのが弱点だ。
今回の駐屯地解散の原因もそれで、なんとトクネードが任務で外出した隙に決定されてしまった。
国家予算の配分が間違っていると言えばそこまでだが、人民公国はスパイや国賊が大手を振って闊歩している国なので仕方がない。
「まぁ、僕たちトクネードは大規模組織じゃないから部隊編成に苦労はしないけど。」
トクネードは国家と民間の双方で活用できる特殊部隊である。が、実際には大きな組織に寄生しているだけである。
また、変わり種メンバーの寄せ集めである関係で敵も多いが、味方につけると利用価値が高いという不可解な部隊でもある。
人員数が少ないため部隊の分割は得策ではなく、中には同時行動を要求するものもいるため扱いは難しいそうだ。
そうこうしているうちに、自分たちの居住区を片づけた代算達一行。
このままとんぼ帰りするのもつまらないので、既に廃墟と化した新川上駐屯地を探検することにした。
ここはトクネードの所属基地。そのメンバーである代算達一行にとっては集合住宅の庭のようなものである。遭難の心配はない。
廃墟探索における一番の問題は施設関係者の巡回だが、そもそも代算達一行は施設関係者であるのでこっちも心配なし。
「じゃ、代算が明るいほうね。私は名無野君と暗いほうに行くからよろしく。」
「OK。三千世界の毒男を殺す嵐のような展開を待ってるよ。」
「抗議!抗議!抗議!」ξ////)ξ(^ω^ )「よろしい。ならば探検だお。」
代算のひとことで暴走しかけた嵐割の手を引き、名無野は地底遺跡へと消えていった。
代算はその様子を見て毒づこうかと思ったが、頭が熱くなってきたので止めた。
別に熱が出たわけではない。臨日が嫉妬して熱を発しているだけだ。
「むー…」「臨日、行こうか。負けてられないよ!」「!…〜♪」
臨日は機嫌を直してくれた。でも意図するところはおそらく違う。別に良いけど。
こういう時は一回外へ出るに限る。代算は最寄りの出口から出て、別の入口を探し始めた。
「お、トクネードの衆も来てたのか。帰ってきた瞬間にこのあり様ってのは正直きついと思うが、どうよ?」
「あ、基地指令!お仕事御苦労様です。メンバー自体は解散したので影響は少ないかと。」
「…ちょっと待て。それは真面目にやばいだろ。常識的に考えて…」
新川上駐屯地の指令官が、基地の最期を見守るべく見回りをしていた。
彼は雷仁族でかなりの年長者。この駐屯地(=彼の家)の実質的な管理人であり、一時期は引退の噂もささやかれていた。
しかし、実際はこの通り、彼の引退と共に駐屯地まで廃止されることになった。
「メンバーが無事で、需要があればトクネードはまた甦りますよ。」
「おじちゃんたち3部族の意志があればなんとかなるー!」
代算の返答に、臨日の援護射撃。戦闘さながらの連携だ。
しかし、そこは地元民である基地指令。すべてを知り尽くしたホームグラウンドで負けるわけにはいかない。
「そうか…あれ?もう一組いたカップルはどこへいったんだ?」
「嵐割たちなら基地の深淵へ向いましたよ。それがどうかしましたか?」
「あ、これから撤去する予定の機械がまだ残ってた。けど、あの二人なら通信が通じるはず。」
「嵐割と名無野なら大丈夫でしょう。どこでも使える自走式通信機みたいな連中ですから。」
代算の顔に心配の色はなかった。嵐割と名無野は如何なる環境でも大容量インターネット接続が可能であるからだ。
これを使ってWi-Fiやバーチャルコンソールを起動させたり、あらゆる無線を傍受することが出来る。
ただし、この能力はどっちかが欠けると弱体化する。
「こちら基地指令。そちらに懐かしの遺物がある。ちょっと確認してみてくれ。」
「わかりました。探索を続行します。」
その解答はすぐに返ってきた。
「HVC-012『ファミコンロボット』ですね。ただ基盤などが完全に痛んでますね…」
ファミコン時代の周辺機器とあって、かなりの骨董品である。とはいえ金属部分の酸化による劣化が進んでおり、もはや使い物にならない。頑丈さが売りの任天堂製品とはいえ、定期的な使用とメンテナンスを受けてない製品はただの有害な置物だ。
また、スーパースコープ、バーチャルボーイ、スーパーゲームボーイなどの周辺機器、さらにはゲームハード本体や各種ソフト、電源供給やデータ送信に用いる各種コード類までもが存在していた。
そこは一種の資材置き場。昔、この基地で電子技術の発展のためにゲーム機を研究しつくした部屋の跡だ。
「これ、いったいどうするんですか?環境に負荷をかける遺産ばっかりですよ?」
電子機器にはあらゆる金属と化合物が駆使される。それらは薬のように働き、捨てられると大地を蝕む。
「問題はそれだけじゃない。誰もいないはずのその部屋に、なぜか生命反応があるんだ。ここんとこ開けてなかったし、食料も存在しない部屋だから生存できる訳はないはずだ。」
嵐割と名無野に戦慄が走った。誰もいないはずの部屋にある生命反応。これを矛盾と言わずしてなんとする。しかもこの部屋は高分子化合物や重金属が大量に存在し、普通の生物は生存できない。
かくして、その部屋に存在した命の灯とは…
「zzz…すぅ…zzz…」
生気を失ったかのような青白い肌をした幼女が、微かな寝息を立てて安らかに眠っていた。
瞳はあらゆる色に変わり、薄く滑らかな七対の翼は虹色の各色に対応。頭部には虹色の各色に彩られた水晶を率いている輪が浮かんでいる。
生命無き空間に存在した謎の生命は、イレギュラーな存在とは何たるかを伝えていた。
「…すまん。俺は機械類の整理に移るから、嵐割はあの子をなんとかして欲しい。」
「仕方ないなー。でも名無野君ならそう言うと思った。」
名無野にとって、幼女はある種のトラウマだった。幼少のころから女性陣に暴力を受けて育った身である。中でも妹の夜謝節による暴力は人智を遥かに超える強烈なものであったという。故に今でも油断を欠かすことはない。
故に嵐割の出番である。彼女は眠れる幼女を起こそうと手法を凝らしたが、逆にそれが仇となって…
「ん〜…むにゃ!」む、うがっ、離れろっ!」
起こした幼女が作業中の名無野に絡んだ。名無野は衝動的に回避を試みるが、あたりの機械類が巻き込まれてうまくいかない。
「ねー、おにーちゃん遊んでよー」だが断るっ!」
あたりの機械類で名無野を捕まえようとする幼女を前に、嵐割は全身の筋肉を震わせた。
―――女の嫉妬、それは男を一方的に封殺する魔性の力―――
名無野が幼女を引き離し嵐割に向け移動したと同時に、嵐割は暗黒の意思を身にまとい瞬時に名無野を包み込む。
「ごめん、なんとか大丈夫。」「ふふふ…幼女だからって容赦はしないわよ…私の男に手を出した罪の代償は軽くないんだから…」
闘志を剥き出しにした嵐割はすでに原形を留めておらず、安堵の息を漏らした名無野にまとわりつくことで己の存在を維持している。
「むー、おねーちゃんだけずるいー!いじわるー!!」
幼女は頬を膨らませると、己の羽を輝かせそこらじゅうにある雑多なゲーム用物品を集めていった。回収された物品は次々と形を変え、一つの大きな機械へと変化を遂げる。
「廃韓の能力に似てるな。嵐割。これからリミッターを解除するから、あの魔女にお灸を据えてやってくれ。」
名無野は嵐割の暗黒に己の身を預けた。即座に嵐割が登場し、名無野はWiiと強化部品を残し嵐割に吸収された。
「もちろん。名無野君は誰にも渡すわけないんだから…」
魔女の造る機械が巨大化し、部屋の構造を破壊していく。ただここはすでに役割を終えた施設であり、一つの機械として吸収されるだけなら環境面に支障はない。どうせなら基地全体を吸収してもらおう。そう考えた嵐割は周囲に電波を飛ばした。
「基地を解体します!全員退避してください!!」
と同時に異次元空間への扉を開いた。と言っても次元の解れを引き裂いただけの簡素な物。そこに魔女と基地を引きずりこみ、環境に与える影響を最小限にする。
魔女は基地の基礎までをも吸収し、巨大な…ファミコンロボットを作り出していた。強度は上がっているがデザイン性がちと足りない。でも強さは未知数である。いわゆるガクエンガーの類である。瞳は赤く輝いていた。
嵐割は名無野のWiiに乗り、幼き魔女に猛烈な吹雪をお見舞いした。これで小手調べというんだから恐れ入る。でも…
「…効かないわね。恐らく戦うのも無茶な相手よ。何やっても八百長にしかならないわ。」
現在の嵐割は名無野を取り込んでいるため思考が2人分、演算能力に至っては3人分もある。融合時に理性が剥がれるとはいっても、ただ本能のみで動き続けるわけではなく、きちんと理性は再生される。
「ただ、打開する方法が見当たらないってことしかわからないけど。」
それでも、相手は強すぎるのだ。いや、理不尽すぎるというべきか。
「あたし、ノアメルト・ロスティア・エルカンシエルっていうの。よろしくね!」
自己紹介しながらブロックやジャイロを飛ばして来る様はまさに傍若無人。しかも付加されている属性の種類が半端ない。というのもあらゆる世界の属性をことごとく駆使しているからである。もちろん、それによる世界観のずれなどは全く問題にならない。ファミコンロボットはと言えば、ブロックやジャイロをノアメルトに奪われ、代わりにスーパースコープを左肩に搭載している。恐らく数秒後には強烈な一撃が発射されるはずだ。
嵐割はすかさず高速移動。ブロックを掴んで投げつけ、砲身を微妙にずらすことで砲撃を回避する。弾幕は投げたりかわしたりの力技回避。
決め手を欠くがしょうがない。なにしろ何を放っても全く効かないのだから。格闘攻撃で削るしかないが、接近するのも大変である。
「(それなら…簒奪だ!準備はいい?)」
足もとのWiiからエネルギー弾が射出され、ロボットの胸部に命中。なんとその部分が開いて間隙が形成された。
「(流石は名無野君、凄まじいことを考えるわね。OK、やってみる。)」
ノアメルトの弾幕もなんのその、嵐割はロボ胸部にできた空間に侵入した。Wiiが隙間を塞ぎ、ロボットの胸部が元通りに閉じられる。ロボットの眼が赤から緑に変わり、乗っ取りは正常に完了した。
これでブロックやジャイロはこっちのものだ。もちろん、効くわけではないのだが。時間稼ぎ程度にはなるだろう。とりあえず撃ちまくってみる。
「むだむだむだむだー!」
なるほど、確かに効いていない。むしろ違う形態をとって跳ね返されている。しかし、真の狙いは弾幕戦なのではない。巨体を生かした格闘攻撃。だが、
「返してよー!!」
ノアメルトの叫びと共に、ロボットの形態が崩れた。嵐割はすぐさま体勢を立て直し、男にも勝る強烈な拳を魔女の脳天にお見舞いした。
ガッ!! 「うえーん!い゙たい゙よぅー!!」
哀れ、ノアメルトは一撃で吹き飛ばされてしまった。轟音のような泣き声があたりに響く。それは巨大ロボ再構築の呼び声。と同時に、虹色の光が柱となって降り注ぐ。
『泣く子と地頭には勝てぬ』とはまさにこのことを言うのだろう。
まさに絶体絶命かに見えたその時、嵐割はこの状況を打開する一つの方法を見出した。
相手は理不尽を体現した存在。すなわち理不尽の原動力であり、理不尽な状態を維持して戦っている。
ならば、取るべき手段は意外と難しくない。少々マナーが悪い行動だが、理不尽な相手にはこれくらいがふさわしい。
** 嵐割(+名無野)さんがログアウトしました **
戦闘中に通信対戦をあきらめ、形式的敗北を喫して元の世界へ戻った。ノアメルトだけを置き去りにして。
本来ならばここで試合が終了するはずなのだが、なぜか終了しない。もっと遊びたいけど、遊べない。まるでカセットを半挿ししたり、ディスクを途中で抜いたりしたかのように場は固まる。
動けるのは『不揃の魔女』ノアメルトだけ。しかし何もできない。終わったら脱出できるはずの空間から、脱出できない。
「…ふぇっ、誰もいないよぉ〜〜〜〜」
嵐割は何を狙ったのか。相手が持つ『矛盾』の力を用い、矛盾だらけの亜空間を作り出すことだ。それは秩序を持つ嵐割(+名無野)が抜けることで完成される。矛盾とは本来不安定なものなのだが、ノアメルトは理不尽極まりない能力をもって矛盾を容認する。それが逆に枷となってしまったのだ。
「うぇえぇっぇぇっぇえぇxっぇぇぇーーーーーーーーーーん!!」
ノアメルトはただ一人泣き続ける。皮肉にも、自ら作りだした矛盾という名の理不尽な箱庭の中で。
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