存在は消えうせるもの
今回はメタ要素とシリアスもどきが混在してるので読むときは気をつけましょう。
魔女の力は凄まじく、次元や世界観の壁も容易に破壊してしまうのですから…
※設定は大至急仕上げますのでしばしお待ちを…
魔女の力は凄まじく、次元や世界観の壁も容易に破壊してしまうのですから…
※設定は大至急仕上げますのでしばしお待ちを…
「ふえーん…ぐすっ」
『不揃の魔女』ノアメルトは涙に暮れていた。矛盾という名の箱庭に閉じ込められ、茫漠たる狭間を旅する孤独感は想像に難くない。
彼女の涙で満たされた箱庭には理不尽が満ちていた。それは不可能を可能にする大いなる力。そして―――
「ふふ、なんかかわいいのがいるわね。」
これまた理不尽な別の存在が、彼女を捉えた。その姿は人間なのだが、あまり大きな違いではない。
「否」
同じころ、『否定の魔女』トレヴィーニも狭間へと戻ってきていた。こちらはノアメルトと違って閉じ込められているわけではないので、時限移動も容易である。
戻ってすぐ見つけたのは、自分の同類を抱えている人間。見たところ大人の女性であることは容易に判明した。
「あ、あの人は…「どうした、元いた世界の知り合いか?」
額の魔石が反応した。閣下と共役している春香が、トレヴィーニに彼女の正体を明かす。
「はい。音無小鳥さんといって、私のいた芸能プロダクションの頼れる事務員なんですよ。」
閣下を魔石にしたはずが、気づいてみれば向こう(原作)の春香になっていた。恐らく、これが一番安定した姿なのだろう。戦闘時には著しく役立たずだが。そんなことはどうでもいい。
「音無小鳥…か。この場所に来れるというのだからただの人間ではあるまい。」
トレヴィーニはそうつぶやいた。すると、ノアメルトが彼女を見つけた。幼女であってもやはり魔女なのである。
「あ、トレちゃんも来たのー?…じゅる」
嫌な音がした。少なくともノアメルトが何を考えてるかはすぐわかる。彼女は空腹に耐えられないのである
「ノアメルト、見ず知らずの存在をいきなり食べるもんじゃないぞ…」
まぁ、自分も人のことは言えない。どんな相手だろうが構わず戦いを仕掛けてしまう戦乙女なのだから。
「え?「いただきまーす。あむっ「!?!」
ノアメルトが小鳥に食らいついた。直後、慟哭と共に時空が歪み、雀の幻影が辺りを覆う。そして―――
「……………!?(声が音にならない!?まさか、音無とはこのことなのか?)」
空気の震えが止まり、波紋が消え失せた。ノアメルトはと言えば、不機嫌な顔をして叫んでいる。しばらくすればその行為の無意味さに気づくだろうが、それには少し時間がかかりそうだ。
次いで、魔石の意思も確認してみる。
「トレv…さん…あの…無k…んh…私t…似t…な…」
案の定、よく聞きとることができない。だが、大体言いたいことはわかった。
「(あの音無小鳥とか言う奴、どうやら天海春香と何か奇妙な係わりがあるんだろうな。)」
直感でしかないが、否定の魔女のそれは刃物のように鋭い。それは否定の権化たる所以だ。メタ的な所まで斬りこめる強さを持っている。
とにもかくにも、この状況を打開しないことには始まらない。まぁ、否定するのは難しくないが。
「(否)」
右腕を前に突き出し、否定の意思をもって姿勢を整える。その腕からは波動がほとばしり、その波動には妖術の類を掻き消す力がある。空気が再び震えだし、黄金の風が自らのもとに戻ってきた。これで音を消されることはなくなったが、一つだけ気づいたことがあった。
(この気配…闘志ではない。しかし、音を封じられるだけでこんなにも精神を削られるとは…)
トレヴィーニとて封印が使えないわけではない。否定の力を使えばいくらでも封印は施せる。しかし、彼女はそれで満足するような器ではない。封印したところでいつか復活するのだから、新鮮なうちに楽しんでおこうというのが基本的な方針なのだ。
(音が全くしないときに聞こえる耳障りな感覚…遅行的だが効果は確かだな)
普段は黄金の風による轟音に包まれているので、音のない空間など考えたこともなかったのだ。
「こらー、にげるなーー!!」
ノアメルトの能天気な声が響く。彼女の視線はまっすぐに小鳥を見つめていた。それは半ば肉食獣のような意志を秘めた眼から発せられている。彼女はおもむろに羽を広げ、頭上に浮かぶ7色の水晶から色とりどりの光弾を撃ちだしていた。
小鳥はその波状攻撃を避けようとしなかったので、ノアメルトの攻撃は全部まともに着弾した。が、小鳥は涼しい顔をして立っている。代わりに――――
「まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」「こ、これは一体どういう攻撃なんだ…?!」
吐き気を催すほど醜悪な感情の奔流が辺りに満ちる。本来なら精神的攻撃と言うのは相手の感情を増幅させるものだが、今回はそれを全く無視している。
トレヴィーニとノアメルトの全神経が警報を鳴らしている。不快だ!耐えられん!なんとかしてくれ!!と。それは空腹を極めた猛獣が持つ生への渇望のようだ。
結果、二人の大いなる魔女が、無抵抗な人間の事務員一人の前で身悶えている。これほど不条理なこともあるまい。そして、それをじっと見ている小鳥は重々しい表情を浮かべていた。
(あの顔は…贖罪。ここまで強力な全体攻撃を持ちながら、何故あのような鬱なる表情を浮かべている?!)
神経をすり減らしながらも、トレヴィーニの思考は続いていた。でも、流石にこの状況下で洞察しろと言われてもやっぱり無理がある。
「春香、あの小鳥とやらについて知ってることはあるか?」
ここは同郷の者から聞いてみるべき、という結論に至ったのだった。
「えーと、確かに事務所の雑事をやらせれば天下に恥じない腕前を見せてくれるんですが、思考が妄想にまみれてましてね。「そうか…」
つまり、これは彼女の妄想だということか。こんなに辛く悲しく不快な気持ちにさせるこの攻撃が。
(否)
トレヴィーニはその考えを否定した。企業の事務をこなす者の生活環境などさっぱりわからないが、妄想とは自己満足のためにするものである。辛く悲しい妄想など、あるわけがない。そもそも妄想とは――――
「…自己満足…現実逃避?」
魔石に宿る春香は、小鳥のことを「仕事はできるが妄想まみれ」と言った。つまり、それだけ現実は辛いのだろう。ここまでくれば、彼女がどうすればこんな攻撃を発動できるのか察しがつく。いや、これはもはや攻撃とは呼べる代物ではない。生きるために必要な行為の一つだ。
「流石だな、小鳥とやら。自らが背負う哀れなる雑事を放出しただけでこれほどの破壊力を生み出すとは。」
正体がわかれば怖くはない。自らの感性を否定し、冷酷になれば済む話なのだから。しかし、それでも思い通りには動けない。
「そう、私は希望のみを胸に抱いて無限の時を生きる者。あなたたちが感じているのは私の放出した嫉妬の感情の一部。でもここまで酷いとルサンチマンとすら呼ばれないの。」
これは向こうのゲームシステムに取り込まれた者の宿命。あらゆる感情が錯綜し、それが何度も繰りかえされる。塗炭の苦しみとはよく言ったものだ。それが幾重にも堆積してヘドロと化しているのが今の小鳥の心の内である。
「なるほど、『――――』のほうがまだましということか。確かに奴との戦いは気持ち良かった。主のように全身が悲鳴を上げるなんてことはなかったからな。」
トレヴィーニが思い出したのは、憎しみを背負ってあてのない戦いを続ける狂戦士。その根源は違えど、行動は自分そっくりだった。
「事務…いや、『時夢の魔女』とでも呼ぶべきか。そなたの日常生活は魔女のそれよりも修羅なのだからな。」
無限の時を生き、その間中底知れぬ熱愛を見せつけられ、己との乖離に愕然とはするが、妄想を用いて現実をただ受け入れる日々。この日々は途切れることなく続き、1年で自分以外の全てがリセットされる。経験、技能、嫉妬、苦悩、その他様々な感情が流れてきては堆積し、それはさながら大鉱床の下地のようだ。
かつて地球上を闊歩した恐竜たちが海中に没して石油となったように、耐えがたい真実が妄想と夢幻の海に没している。それはあまりにも危険な状態。魔女たちとてこのような状況は未経験である。
「――――――くぁwせdrftgyふじこlp!fsjせへうえchjffkf―――…」
ノアメルトはもはやまともに話せなくなっていた。まともにしていれば可愛い幼女なのに、勿体ないものである。まぁ、この状況でそれを望むべきではないということはわかっているのだが。
「…さて、大体の事情はこれでわかった。ではさっさとここから退いてもらおうか!!」
現実の非情さを体現するかのように、トレヴィーニは攻撃態勢に入る。両手を用いて七星を描き、死兆星アルコルから柄杓を取り出し、闘気を体現した水で相手の牽正を貫く。これで否定できぬ相手などいるわけがない。
「否定…無常破秩水!」―――――――――――――!!」
ノアメルトの無秩序な攻撃をかき集め、一条の矢が『時夢の魔女』音無小鳥めがけて飛んでゆく。それは波動砲のような凄まじい威力で、無抵抗な相手はそのまま消滅した―――。
「zzz…すぅ…」
疲れ果てて眠ってしまったノアメルトの寝息が静かな狭間を支配する。とりあえず戦闘にならない死闘はこれで終わったわけだ。しかし、トレヴィーニは釈然としない雰囲気に包まれていた。
「(もし小鳥とやらが魔女ならば、それは最弱の魔女なのだろう。しかし、自由奔放な奴が多い魔女のことだ。同じ魔女からすれば、奴は最も恐ろしい存在に見えるだろう…)」
なぜ彼女はそう考えるのか。実は、とどめの一撃として放った否定無常破秩水の矢が命中していなかったのだ。どうやら命中する寸前で「修正」され、また無限ループの世界に引き戻されたようだ。
確かにノアメルトの攻撃が混ざってはいたが、それでも命中精度は恐ろしく高い必殺の一撃であることに変わりはない。
「秩序に束縛された魔女…か。我々カービィも元々は似たようなものなんだがな…」
元々カービィは版権を2重に持つ存在だ。制作元のHAL研は原核細胞のようなもので、巨大な任天堂に取り込まれ、今では細胞膜を「2重に」持つ細胞小器官のようになっている。一見必要なさそうに見える2重の膜だが、実際はこの構造無くして正常に機能することはありえない。
弱者が強者に取り込まれ、なくてはならない物になっていくという皮肉な現実。そんな企業同士のやり取りの中で、カービィは育っていった。
「考えてみれば人間臭いな。だが、妾はそんな血生臭くて腐臭がする世界が好きなのだ。」
こうでなければ戦いなどできない。弱さや不条理がなければ否定の力を使っても空虚なだけ。やがては怠惰に沈んでしまうことになる。
こうしてトレヴィーニはいつもの調子を取り戻したのだが、気がかりなのはノアメルトだ。
空腹に苦しんでいるところに重ルサンチマン的精神的攻撃を加えられては、気ままな幼女など容赦なく沈んでしまうだろう。
「そうだ、春香に前聞いたお菓子屋に行ってみようか。」
そこには精神をも満たすお菓子を作る『P』なるものが居て、日々修行のためにお菓子を作っているという。
まだ荒削りながら味はかなりのもので、「食べ過ぎに注意しましょう」という滑稽な評判で有名らしい。
「寝るな、ノアメルト。たまには美味しいものでも食べにいこうじゃないか。」
「はーい!おなかすいたー!!」
血気に盛るノアメルトを抑えつつ、二人は甘味と暖気に満ちたお菓子な場所へと移動を始めたのだった。
『不揃の魔女』ノアメルトは涙に暮れていた。矛盾という名の箱庭に閉じ込められ、茫漠たる狭間を旅する孤独感は想像に難くない。
彼女の涙で満たされた箱庭には理不尽が満ちていた。それは不可能を可能にする大いなる力。そして―――
「ふふ、なんかかわいいのがいるわね。」
これまた理不尽な別の存在が、彼女を捉えた。その姿は人間なのだが、あまり大きな違いではない。
「否」
同じころ、『否定の魔女』トレヴィーニも狭間へと戻ってきていた。こちらはノアメルトと違って閉じ込められているわけではないので、時限移動も容易である。
戻ってすぐ見つけたのは、自分の同類を抱えている人間。見たところ大人の女性であることは容易に判明した。
「あ、あの人は…「どうした、元いた世界の知り合いか?」
額の魔石が反応した。閣下と共役している春香が、トレヴィーニに彼女の正体を明かす。
「はい。音無小鳥さんといって、私のいた芸能プロダクションの頼れる事務員なんですよ。」
閣下を魔石にしたはずが、気づいてみれば向こう(原作)の春香になっていた。恐らく、これが一番安定した姿なのだろう。戦闘時には著しく役立たずだが。そんなことはどうでもいい。
「音無小鳥…か。この場所に来れるというのだからただの人間ではあるまい。」
トレヴィーニはそうつぶやいた。すると、ノアメルトが彼女を見つけた。幼女であってもやはり魔女なのである。
「あ、トレちゃんも来たのー?…じゅる」
嫌な音がした。少なくともノアメルトが何を考えてるかはすぐわかる。彼女は空腹に耐えられないのである
「ノアメルト、見ず知らずの存在をいきなり食べるもんじゃないぞ…」
まぁ、自分も人のことは言えない。どんな相手だろうが構わず戦いを仕掛けてしまう戦乙女なのだから。
「え?「いただきまーす。あむっ「!?!」
ノアメルトが小鳥に食らいついた。直後、慟哭と共に時空が歪み、雀の幻影が辺りを覆う。そして―――
「……………!?(声が音にならない!?まさか、音無とはこのことなのか?)」
空気の震えが止まり、波紋が消え失せた。ノアメルトはと言えば、不機嫌な顔をして叫んでいる。しばらくすればその行為の無意味さに気づくだろうが、それには少し時間がかかりそうだ。
次いで、魔石の意思も確認してみる。
「トレv…さん…あの…無k…んh…私t…似t…な…」
案の定、よく聞きとることができない。だが、大体言いたいことはわかった。
「(あの音無小鳥とか言う奴、どうやら天海春香と何か奇妙な係わりがあるんだろうな。)」
直感でしかないが、否定の魔女のそれは刃物のように鋭い。それは否定の権化たる所以だ。メタ的な所まで斬りこめる強さを持っている。
とにもかくにも、この状況を打開しないことには始まらない。まぁ、否定するのは難しくないが。
「(否)」
右腕を前に突き出し、否定の意思をもって姿勢を整える。その腕からは波動がほとばしり、その波動には妖術の類を掻き消す力がある。空気が再び震えだし、黄金の風が自らのもとに戻ってきた。これで音を消されることはなくなったが、一つだけ気づいたことがあった。
(この気配…闘志ではない。しかし、音を封じられるだけでこんなにも精神を削られるとは…)
トレヴィーニとて封印が使えないわけではない。否定の力を使えばいくらでも封印は施せる。しかし、彼女はそれで満足するような器ではない。封印したところでいつか復活するのだから、新鮮なうちに楽しんでおこうというのが基本的な方針なのだ。
(音が全くしないときに聞こえる耳障りな感覚…遅行的だが効果は確かだな)
普段は黄金の風による轟音に包まれているので、音のない空間など考えたこともなかったのだ。
「こらー、にげるなーー!!」
ノアメルトの能天気な声が響く。彼女の視線はまっすぐに小鳥を見つめていた。それは半ば肉食獣のような意志を秘めた眼から発せられている。彼女はおもむろに羽を広げ、頭上に浮かぶ7色の水晶から色とりどりの光弾を撃ちだしていた。
小鳥はその波状攻撃を避けようとしなかったので、ノアメルトの攻撃は全部まともに着弾した。が、小鳥は涼しい顔をして立っている。代わりに――――
「まぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」「こ、これは一体どういう攻撃なんだ…?!」
吐き気を催すほど醜悪な感情の奔流が辺りに満ちる。本来なら精神的攻撃と言うのは相手の感情を増幅させるものだが、今回はそれを全く無視している。
トレヴィーニとノアメルトの全神経が警報を鳴らしている。不快だ!耐えられん!なんとかしてくれ!!と。それは空腹を極めた猛獣が持つ生への渇望のようだ。
結果、二人の大いなる魔女が、無抵抗な人間の事務員一人の前で身悶えている。これほど不条理なこともあるまい。そして、それをじっと見ている小鳥は重々しい表情を浮かべていた。
(あの顔は…贖罪。ここまで強力な全体攻撃を持ちながら、何故あのような鬱なる表情を浮かべている?!)
神経をすり減らしながらも、トレヴィーニの思考は続いていた。でも、流石にこの状況下で洞察しろと言われてもやっぱり無理がある。
「春香、あの小鳥とやらについて知ってることはあるか?」
ここは同郷の者から聞いてみるべき、という結論に至ったのだった。
「えーと、確かに事務所の雑事をやらせれば天下に恥じない腕前を見せてくれるんですが、思考が妄想にまみれてましてね。「そうか…」
つまり、これは彼女の妄想だということか。こんなに辛く悲しく不快な気持ちにさせるこの攻撃が。
(否)
トレヴィーニはその考えを否定した。企業の事務をこなす者の生活環境などさっぱりわからないが、妄想とは自己満足のためにするものである。辛く悲しい妄想など、あるわけがない。そもそも妄想とは――――
「…自己満足…現実逃避?」
魔石に宿る春香は、小鳥のことを「仕事はできるが妄想まみれ」と言った。つまり、それだけ現実は辛いのだろう。ここまでくれば、彼女がどうすればこんな攻撃を発動できるのか察しがつく。いや、これはもはや攻撃とは呼べる代物ではない。生きるために必要な行為の一つだ。
「流石だな、小鳥とやら。自らが背負う哀れなる雑事を放出しただけでこれほどの破壊力を生み出すとは。」
正体がわかれば怖くはない。自らの感性を否定し、冷酷になれば済む話なのだから。しかし、それでも思い通りには動けない。
「そう、私は希望のみを胸に抱いて無限の時を生きる者。あなたたちが感じているのは私の放出した嫉妬の感情の一部。でもここまで酷いとルサンチマンとすら呼ばれないの。」
これは向こうのゲームシステムに取り込まれた者の宿命。あらゆる感情が錯綜し、それが何度も繰りかえされる。塗炭の苦しみとはよく言ったものだ。それが幾重にも堆積してヘドロと化しているのが今の小鳥の心の内である。
「なるほど、『――――』のほうがまだましということか。確かに奴との戦いは気持ち良かった。主のように全身が悲鳴を上げるなんてことはなかったからな。」
トレヴィーニが思い出したのは、憎しみを背負ってあてのない戦いを続ける狂戦士。その根源は違えど、行動は自分そっくりだった。
「事務…いや、『時夢の魔女』とでも呼ぶべきか。そなたの日常生活は魔女のそれよりも修羅なのだからな。」
無限の時を生き、その間中底知れぬ熱愛を見せつけられ、己との乖離に愕然とはするが、妄想を用いて現実をただ受け入れる日々。この日々は途切れることなく続き、1年で自分以外の全てがリセットされる。経験、技能、嫉妬、苦悩、その他様々な感情が流れてきては堆積し、それはさながら大鉱床の下地のようだ。
かつて地球上を闊歩した恐竜たちが海中に没して石油となったように、耐えがたい真実が妄想と夢幻の海に没している。それはあまりにも危険な状態。魔女たちとてこのような状況は未経験である。
「――――――くぁwせdrftgyふじこlp!fsjせへうえchjffkf―――…」
ノアメルトはもはやまともに話せなくなっていた。まともにしていれば可愛い幼女なのに、勿体ないものである。まぁ、この状況でそれを望むべきではないということはわかっているのだが。
「…さて、大体の事情はこれでわかった。ではさっさとここから退いてもらおうか!!」
現実の非情さを体現するかのように、トレヴィーニは攻撃態勢に入る。両手を用いて七星を描き、死兆星アルコルから柄杓を取り出し、闘気を体現した水で相手の牽正を貫く。これで否定できぬ相手などいるわけがない。
「否定…無常破秩水!」―――――――――――――!!」
ノアメルトの無秩序な攻撃をかき集め、一条の矢が『時夢の魔女』音無小鳥めがけて飛んでゆく。それは波動砲のような凄まじい威力で、無抵抗な相手はそのまま消滅した―――。
「zzz…すぅ…」
疲れ果てて眠ってしまったノアメルトの寝息が静かな狭間を支配する。とりあえず戦闘にならない死闘はこれで終わったわけだ。しかし、トレヴィーニは釈然としない雰囲気に包まれていた。
「(もし小鳥とやらが魔女ならば、それは最弱の魔女なのだろう。しかし、自由奔放な奴が多い魔女のことだ。同じ魔女からすれば、奴は最も恐ろしい存在に見えるだろう…)」
なぜ彼女はそう考えるのか。実は、とどめの一撃として放った否定無常破秩水の矢が命中していなかったのだ。どうやら命中する寸前で「修正」され、また無限ループの世界に引き戻されたようだ。
確かにノアメルトの攻撃が混ざってはいたが、それでも命中精度は恐ろしく高い必殺の一撃であることに変わりはない。
「秩序に束縛された魔女…か。我々カービィも元々は似たようなものなんだがな…」
元々カービィは版権を2重に持つ存在だ。制作元のHAL研は原核細胞のようなもので、巨大な任天堂に取り込まれ、今では細胞膜を「2重に」持つ細胞小器官のようになっている。一見必要なさそうに見える2重の膜だが、実際はこの構造無くして正常に機能することはありえない。
弱者が強者に取り込まれ、なくてはならない物になっていくという皮肉な現実。そんな企業同士のやり取りの中で、カービィは育っていった。
「考えてみれば人間臭いな。だが、妾はそんな血生臭くて腐臭がする世界が好きなのだ。」
こうでなければ戦いなどできない。弱さや不条理がなければ否定の力を使っても空虚なだけ。やがては怠惰に沈んでしまうことになる。
こうしてトレヴィーニはいつもの調子を取り戻したのだが、気がかりなのはノアメルトだ。
空腹に苦しんでいるところに重ルサンチマン的精神的攻撃を加えられては、気ままな幼女など容赦なく沈んでしまうだろう。
「そうだ、春香に前聞いたお菓子屋に行ってみようか。」
そこには精神をも満たすお菓子を作る『P』なるものが居て、日々修行のためにお菓子を作っているという。
まだ荒削りながら味はかなりのもので、「食べ過ぎに注意しましょう」という滑稽な評判で有名らしい。
「寝るな、ノアメルト。たまには美味しいものでも食べにいこうじゃないか。」
「はーい!おなかすいたー!!」
血気に盛るノアメルトを抑えつつ、二人は甘味と暖気に満ちたお菓子な場所へと移動を始めたのだった。
コメント
コメントの投稿


